腸内細菌叢のこと、もっと知ろう

腸内細菌叢とは

ヒトの腸管、主に大腸には約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息しており、善玉の菌と悪玉の菌、そのどちらでもない中間の菌と、3つのグループに分けられます。これらの菌は互いに密接な関係を持ち、複雑にバランスをとっています。
悪玉菌は、たんぱく質や脂質が中心の食事・不規則な生活・各種のストレス・便秘などが原因で腸内に増えてきます。一方、善玉菌は乳酸や酢酸などを作り、腸内を酸性にすることによって、悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にし、食中毒菌や病原菌による感染の予防や、発がん性をもつ腐敗産物の産生を抑制する腸内環境を作ります。また善玉菌は腸内でビタミン(B1・B2・B6・B12・K・ニコチン酸・葉酸)を産生します。
腸内細菌が健康的な好ましい状態であるかどうかを知るもっとも簡単な方法は、便を観察することと言われています。善玉菌がたくさん酸を作っていると、色は黄色から黄色がかった褐色で、においがあっても臭くなく、形状は柔らかいバナナ状が理想です。逆に黒っぽい色で悪臭がある便は、腸内細菌のバランスが悪くなっている状態です。健康づくりにはおなかの中の同居人である腸内細菌の状態を良く知り、仲良くなることが大切です。

参考)
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html

 

腸内細菌と21世紀病

 20世紀以前は肺炎、結核、感染性下痢症などの感染症で多くの人が命を落としていました。こうした病気は平均寿命に大きく影響し、1900年代の全世界的な平均寿命は31歳でした。ところがこの100年間で、特に抗生物質が普及した1940年代の10年を境に、人類はこれまでの倍の時間を生きるようになりました。その一方で肥満、過敏性腸症候群、アレルギー、自己免疫疾患、自閉症など20世紀後半から先進国 で急増している病気があります。これらの病気には共通点がないようにも見えますが、アレルギーによるくしゃみ、かゆみ、自己免疫疾患による日常生活の崩壊、肥満による自己嫌悪、消化器疾患による 恥辱、心の病気による社会的排斥など、 これらの病気の攻撃標的が すべて自分自身であることが大局的に見ると共通点です。感染症がなくなった途端、体が自分自身に歯向かうようになったといえます。これらの原因は免疫系、消化器系の障害ですが、さらに根源的な原因となるのが人体内に存在する細胞の90%を占める微生物の様相、特に腸内細菌叢が従来と変わってしまったことで生じたと言われています。例えば肥満においては肥満者と健常者では超細菌叢に差があることがわかっています。ヒトの体重は単に「カロリーイン・アウト」の差し引きだけはなく、食生活(特に食物繊維の摂取量)と微生物、それに伴う短鎖脂肪酸、腸壁の透過性、炎症性サイトカイン産生の相互作用の影響を受けます。肥満は単なる過食の結果ではなく、腸内環境の変化を引き金とした、エネルギー調整の不具合による病気だとも言えます。
このように現代病の真の原因が明らかになりつつあります。その中でも腸内細菌叢は重要なキー・ワードとなりそうです。

参考)
アランナ・コリン. あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた (河出書房新社)